お盆も過ぎて、朝晩は冷え込み始めた蒜山です。
先週全ての発送を終了しました、8月前半限定の小屋束豆腐おすすめセット、
ご利用をいただきありがとうございました。
初回お試しでご注文いただいたり、大切な方への贈り物としてご用命いただいたこと、とても嬉しかったです。
5月にウェブサイトをオープンし、少しずつ小屋束豆腐店としての通販の形態を整えていくにあたり、
定期購入もスタートさせて、8月前半は少し自分自身に負荷をかけて、製造量を増やす試みをしてみました。
今までより多くのお客様に豆腐を届ける中で、メールで直接ご感想をいただいたり、
定期便に切り替えていただいたり、励ましのお言葉を頂いたりすることが、
思っていた以上に多く、本当に勇気付けられました。
以前、どこかの豆腐屋さんが、「昔は近かった豆腐屋とお客さんとの距離が、今はずいぶん遠くなったよね。」
とおっしゃっていたのを聞いたことがあります。
豆腐はまちの豆腐屋で買うもの、という時代から、
量販店で買うようになった時代の移り変わりを表しているのだと思います。
私が主に豆腐製造を学ばせて頂いたは、東京の下町、新大橋の美濃屋豆腐店さんです。
100余年の老舗である豆腐屋は、いわゆるまちの豆腐屋さんでした。
近所の人が桶やボウルを持って豆腐を買いに来ます。
地域の小学校に通う子どもたちは給食に出てくる美濃屋の豆腐を食べて大きくなり、
大人たちも、朝いってきますと仕事に向かい、夜はただいまと言って豆腐を買って家路につきます。
そこには当たり前のような信頼関係があり、それぞれに相手を思いやる空気があったように感じています。
きっとこういう地域は、何かあった時でも比較的大丈夫なのかもしれないな感じたことを覚えています。
豆腐屋とお客さんの近い距離感を見せていただいた一つの経験です。
老舗には老舗の計り知れない苦労もある中で、日々お店に立つ美濃屋の師匠2人、お母さんの後ろ姿は、
ずっと私の憧れであり、いつも頭の片隅にあって私を励ましてくれています。
私がこうして蒜山で豆腐を作ることになり、個人のお客様向けの通販をメインに販売をスタートさせたのも、
少なからずこの「豆腐屋とお客さんの距離」を意識しています。
距離感が近いのがいい、遠いのがよくない、ということではなく、
こんな豆腐屋があってもいいのかなという気持ちです。
それぞれのお客様のご家庭の好みに合った豆腐をつくり届ける、
そして、遠く離れた場所にお住まいのお客様から思ってもみないほどに沢山のご感想や
ご要望の声を直接いただけること、じんわりと嬉しいな、と思っています。
ちょっと話が飛躍しますが、
遠く離れた場所にいる誰かを思いやる人が多い世の中は、
何かあったときに少しだけ心強いかもしれないと考えています。
私たちはいつどんな災害や事故などで予期せぬ事態に見舞われるかわかりません。
そんな時に、遠くから近くから、思いやる心が集まることで、悲しいの数が少し減ったり和らいだり、
束の間でもホッとしたり、嬉しい気持ちになったり、
仕事をする一つの理由として、それだけではありませんが、
一部分として、それで十分なのだと思う気持ちもあります。
「小屋束豆腐店さんの豆腐づくりが健やかに続きますように。」
と言ってくださるお客様が何人かいらっしゃいました。
本当に有難いです。
そしてお察しがいい、まだまだ私は、「豆腐屋を続けていくこと」について、
向き合わなければいけないことが山のようにあります。
けれども、豆腐作りは、やはり最高に楽しいですし、食べてくださるお客様がいてくださることは
この上ない幸せです。
変に背伸びすることなく、ただそれぞれのご家庭に向けてという気持ちは常に心に留めながら、
真摯に豆腐製造を続けていけたらという気持ちでいます。
楽しく、心身ともに健康に、時に鍼灸の先生にお世話になりながら、
やっていこうと思います。
8月前半のご愛顧ありがとうございました。
(写真:山本康平さん)